20代・30代で発症する人が増加「子宮頸がん」は若い女性に急増中
今、20代・30代の若い女性に子宮頸がんが急増していることを知っていますか?
子宮にできるがんには、子宮の入り口部分の子宮頸部にできる「子宮頸がん」と子宮体部にできる「子宮体がん」があります。
特に若い世代が気をつけたいのが子宮の入り口部分にできる「子宮頸がん」です。近年は20代から40代で発症する人が多く、出産や子育てをする時期の女性がかかることから「マザーキラー(母親を殺すがん)」とも呼ばれています。
では、昔と比べてどのくらい増えているのでしょうか? 約30年前と比較してみましょう。
20代・30代の女性の子宮頸がんの発症率は、1990年は7.8人(10万人あたり)だったのに対し、2014年は16.8人(10万人あたり)と約2倍に増えています。
また現在、日本人女性で一生のうちに子宮頸がんを発症する人は74人に1人程度ともいわれ、2000年代以降、20代からの罹患が急激に増えているのもこのがんの特徴です。
【そもそも子宮ってどんな臓器?】
子宮は女性がおなかの中で赤ちゃんを育てるために必要な臓器です。女性の下腹部にあり、腟に近い下部の筒状の部分を「子宮頸部」、赤ちゃんが育つ上部の袋状の部分を「子宮体部」といいます。
子宮の大きさは普段はニワトリの卵くらいです。しかし、妊娠して赤ちゃんが大きくなるとバスケットボールより大きくなり、歳をとって生理が停止(閉経)すると徐々に小さくなるといわれています。閉経の年齢には個人差がありますが、早い人で40代半ば、遅い人では50代後半に迎えます。
原因は「ヒトパピローマウイルス(HPV)」性交経験のある女性の過半数が一生に一度は感染
では、なぜ子宮頸がんにかかるのでしょうか? 子宮頸がんの原因のほとんどは、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスによる感染です。主に性交によって感染し、50〜80%の女性が生涯のうちに一度は感染するといわれています。
ならば、「ほとんどの女性が子宮頸がんにかかるのでは?」と思いませんか? 実はこのウイルスに感染しても、約90%の人は自分自身のもつ免疫力によってウイルスを追い出すことができます。
ただし気をつけなければいけないのが、残りの約10%です。感染した人の中の約10%は感染が長期間続いてしまうことがあり、その一部が数年〜数十年かけて子宮頸がんに進行します。
このように子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルスの“持続感染”なのです。
近年、持続感染だけでなく、潜伏感染も原因になることがわかってきました。
感染したヒトパピローマウイルスは、免疫の力によってすベてが消えるわけではなく、ひっそりと潜伏している可能性が指摘されています。つまり免疫の力によってウイルスがおとなしくしている間は問題ないのですが、加齢などで免疫力が落ちることで、これらのウイルスが再活性化。どんどん増殖をはじめてしまうこともあるのです。
【気をつけなければいけないのは女性だけじゃない!】
ヒトパピローマウイルス(HPV)に気をつけなければいけないのは女性だけではありません! ヒトパピローマウイルス(HPV)はとても身近なウイルスで、性交経験のある男女なら誰でも感染する可能性があります。
子宮頸がんのほかにも、肛門がん、中咽頭がん、陰茎がんなどの原因にもなり、男性にとっても感染しないための対策が必要なウイルスなのです。
監修:大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科講師上田豊先生
「子宮頸がんで苦しむ日本の女性を少しでも減らしたい」という強い思いから、日本のHPV感染状況やHPVワクチンについてさまざまな角度からの分析・検証に取り組んでいる。同時に、産婦人科医として子宮頸がんの診療にあたりながら、子宮頸がんの正しい情報と予防策の普及にも努めている。