Vol.4では HPV の種類、HPV ワクチンを接種するタイミングと効果について学びました。では、HPVワクチンには種類があるのでしょうか?
現在、日本国内で接種できるHPV ワクチンは3種類あります。1つめは2価HPV ワクチン(サーバリックス)。2つめは4価HPV ワクチン(ガーダシル)、3つめは9価HPV ワクチン(シルガード9)です。
表でわかるように、2価、4価、9価の違いは対応しているHPV の種類の数。HPV の種類は200以上あり、子宮頸がんの原因と考えられる高リスク型のHPV には、HPV 16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、68などがあります。
この中でも2価は子宮頸がんの原因の約65%を占める16と18、4価は16、18、6、11、9価は16、18、6、11、31、33、45、52、58の型の感染予防効果が期待できます。
HPV ワクチンは定期接種として公費で受けることができます。2価HPV ワクチン(サーバリックス)と4価HPV ワクチン(ガーダシル)に加え、2023年4月からは9価HPV ワクチン(シルガード9)も定期接種の対象となり、選択の幅が広がりました。
HPVワクチンはいつから接種できる?
Q.2価、4価を接種すると9価は接種できない?
原則として同じ種類のワクチンを接種することをお勧めしますが、医師と相談のうえ、途中から9価ワクチンに変更し、残りの接種を完了することも可能です※。この場合にも公費で接種することができます。
※ 2価または4価のHPVワクチン(サーバリックス®またはガーダシル®)を接種した後に9価ワクチン(シルガード®9)を接種することに対する効果やリスクについての科学的知見は限定されています。
世界ではHPVワクチンの接種率が80%を超える国も
世界にはHPVワクチンの接種を推奨している国が複数あり、カナダやイギリスなどは接種率が80%を超えています。では、日本の接種率はどうでしょう? グラフを見てもわかるように、日本の接種率は世界各国に比べてかなり低く、1.9%です(2019年)。
それに加え日本で深刻なのが、子宮頸がん検診の受診率の低さです。子宮頸がんの予防には、HPVワクチンの接種と子宮頸がん検診の定期的な受診が大切です。しかし日本は、HPVワクチンの接種率が低いだけでなく、世界各国に比べて子宮頸がん検診の受診率も低く、20〜69歳の女性の44%しか受診していません。
心配なのは副反応。HPVワクチンの安全性は大丈夫?
HPVワクチンを接種することの大切さはわかったけど、心配なのが“副反応”という人もいるかもしれません。
副反応とは、簡単にいうと「ワクチンを接種したことによっておこる、免疫付与以外の反応」のこと。HPVワクチン接種の主な副反応には、熱が出たり、接種部位が腫れたり、しこりが出たりなどがあります。
これはワクチンによって免疫が作られるときの体の反応で、一時的に起こるものがほとんど。個人差はありますが、大抵が2〜3日で自然に消えます。
ただ少数ではありますが、中には痛みが続いたり、運動障害を起こしたりすることも。厚生労働省の調査では、副反応かどうか確定していない疑い症例も含め、重篤なケースは接種1万人当たり5~7人報告されています。
またHPVワクチンに限らず、注射の痛みや怖いと思う気持ちなどの刺激がきっかけになって、接種後にめまいやふらつき、失神などが起こることもあります。ただしこれらは通常、横になって安静にしていれば回復します。
HPVワクチンの接種と24の症状発生との間に因果関係はなし
名古屋市では、HPVワクチンと接種後の症状の関連性を調査するため、1994年4月2日〜2001年4月1日までに生まれた名古屋市の女性7万1177人を対象に、匿名郵便による大規模なアンケート調査を実施しました。
これは「名古屋スタディ」と呼ばれ、2万9846人が回答。24の症状のいずれに対してもワクチン接種による増加はみられず、学校の出席に大きく影響するような症状も認められませんでした。この結果から、HPVワクチンと接種後の症状の因果関係は否定的と報告されています。
監修:大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科講師上田豊先生
「子宮頸がんで苦しむ日本の女性を少しでも減らしたい」という強い思いから、日本の若い女性でのHPV感染状況やHPVワクチンがどのくらいの期間感染を予防できるのか等、日本の子宮頸がん予防に役立つ研究を日々行っている。同時に、産婦人科医として子宮頸がんの診療にあたりながら、子宮頸がんの正しい情報と予防策の普及にも努めている。