Vol.6 男性も人ごとじゃない!HPVの影響とは?

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HPVの感染は中咽頭がんや口腔がんの原因にも

HPVへの感染が原因でがんになるのは、女性だけだと思っていませんか?

HPVはとてもありふれたウイルスで、性交渉が原因で男女問わず誰でも感染する可能性があります。子宮頸がんの原因になるだけでなく、中咽頭がん、口腔がん、肛門がんなどの原因にもなります。

つまり女性だけでなく、男性もがんにかかるリスクがあるということ。アメリカの報告では、女性のHPVに起因する子宮頸がんと男性のHPVに起因する中咽頭がんの人数は、ほぼ同じという結果も出ています。

HPVに起因する男女のがん(アメリカ)
United States Cancer Statistics DATABRIEF,No. 4 August 2018,

感染の拡大を防ぐためには、男性もHPVの予防を

男女間、同性間を問わず、どちらからも性交渉によってHPVに感染します。もし感染に気がつかないままパートナーと性交渉を行えば、知らぬ間に相手を感染させてしまう恐れがあります。

また、相手から感染してしまうこともあり得るということです。つまり、大切なパートナーを感染させないためにも、自分自身をがんから守るためにも男女問わず感染してしまう前の予防がとても重要になってきます。

そのためには男性も女性同様、初めての性交渉の前にHPVワクチンを接種することが理想的です。

日本でも2020年12月、厚生労働省によって4価HPVワクチンの9歳以上の男性への接種が承認されました。とはいえ、男性はまだ無料で受けることができる定期接種の対象外。

年齢に関わらず全額自己負担となり、3回接種した場合は計5〜6万円の費用がかかります。HPVワクチンの接種に対応している内科や小児科、婦人科や産婦人科などで接種が可能ですが、対応しているかどうか事前の問い合わせが必要です。

オーストラリアでは男性の接種率が88%も

では世界ではどうなのでしょうか? 各国で男性へのHPVワクチンの接種の導入が進んでおり、アメリカやイギリス、オーストラリア、カナダなどでは、男性へのHPVワクチンの接種率も上昇しています。アメリカでは64%※1の男性がHPVワクチンを接種しているという報告も。

HPVワクチンの男女別の導入国数
Bruni L et al. Prev Med. 2020:106399. doi: 10.1016/j.ypmed.2020.106399

※高所得国とは……世界銀行が世界の国と地域を4つに分類した所得グループの1つで、1人当たりの国民総所得(GNI)が1万3205ドル以上を「高所得国」と定義している。

また女性の約90%が最低1回はHPVワクチンを接種しており、さらに男性の接種率も88%※1と高いオーストラリアでは、もし9価HPVワクチンを男女ともに接種し、皆が5年ごとにHPV検査を受ければ、集団免疫※2により2028年には子宮頸がんは排除されるという予測結果も出ています※3

世界の多くの国ではHPVワクチンの高い接種率を背景に、HPV関連のがんは減少傾向になると予測されています。しかし残念ながら、日本だけが増加傾向にあるという予測が。このままでは日本だけが突出してHPVの関連がんの罹患率が増えることになってしまう可能性があります。

HPV関連がんの罹患率の推移と今後の予測
Worldwide trend in human papillomavirus–attributable cancer incidence rates between 1990 and 2012 and Bayesian projection to 2030 Wu J et al.Cancer. 2021. doi: 10.1002/cncr.33628. [Epub ahead of print] より作成

世界では、男性へのHPVワクチンの接種が当たり前になってきている国が増えています。それに比べて、日本では男性が接種する有用性すらあまり知られておらず、接種率が極端に低いのが現状です。まずはHPVワクチンの正確な情報を知り、女性だけでなく男性も接種するかどうか真剣に考えてみる必要がありそうです。

【まとめ】
Vol.1〜Vol.6を読んでどんなことを感じましたか? 子宮頸がん、HPV関連のがんは、HPVワクチンの接種と検診の定期的な受診で防げるがんです。未来の自分や大切な人のために、10代の自分に今できることについて考え、行動してみませんか。

※1World Health Organization. Immunization, Vaccines and Biologicals.
※2国などの大きな集団の中で、感染症に対する免疫を持っている人が増え、自然と感染症が抑え込まれていくこと。
※3Lancet Public Health. 2016;1:e8-e17.

監修:大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科講師上田豊先生 

「子宮頸がんで苦しむ日本の女性を少しでも減らしたい」という強い思いから、日本の若い女性でのHPV感染状況やHPVワクチンがどのくらいの期間感染を予防できるのか等、日本の子宮頸がん予防に役立つ研究を日々行っている。同時に、産婦人科医として子宮頸がんの診療にあたりながら、子宮頸がんの正しい情報と予防策の普及にも努めている。

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